罪と罰

いままさに注目を浴びている題材であることもあり、心して読みました。山口母子殺害事件での被害者側の方もこの中の主人公である「ぼく」も、やはり一番知りたいのは「真実」。そしてその真実が判った時に、もしももう取り返しがつかないならば…犯人に対してどんな罪を望むことが正しいのか。罪と罰を裁量する秤…自分ならどうなのだろう?と考えてみたり。
もうひとつ、このお話はもし自分に誰かを殺す力があった場合、その能力をどう考えますか?という問いかけもされています。人を自分の言葉で自由に操る能力があったらあなたはどうしますか?もちろんその能力はうまく使えば人を助けることもできます。さて、どうするかな?と…考えてみたり。
自分は最後の彼の決断は、相手に何か罪を与えるときは自分にもリスクを与える必要がある…という考え方のもとに発生したのではないかと考えています。被害者は犯罪者にどうあってほしいのかな…罪を悔やんでほしいのか?それとも悪人であってほしいのか?…どちらにしても自分の見ている相手の姿が真実の姿であることがあってのことです。しかし辻村さんのお話はいつも丁寧で気持ちがいいです。必要なことが必要な分量きちんと書かれているため、落ち着いて読めるので小説の底をきちんと考えられます。オススメ。

ぼくのメジャースプーン (講談社ノベルス)

ぼくのメジャースプーン (講談社ノベルス)